(22)【 転機 】

真っ暗なトンネルの中の話は、きっとまだまだいっぱいあるのですが(笑)
どうも筆がすすみません!
なので…一気に方向転換。
その真っ暗なトンネルの中からわずかに明るい光が見えた気がした…瞬間!
そして
結果的には、それが…わたしの転機になった出来事のお話です。
しぶとくその家に住まわさせてもらっていましたが
いよいよ生まれ育ったその家を出なければいけない日がやって来ました。
ど田舎…に住んでいたわたし達家族が
少し田舎の四日市に引っ越すという…田舎もの業界での昇格でしょうか(笑)
でも、明らかに今まで発生しなかった『家賃』というツワモノが目の前に立ちはだかるわけで
今まで以上の働きが必要になります。
そんなわたしを気にして、パート先を紹介してくださる方がいてくださり
そんなわたしを使ってくださるという社長さんがいてくださいました。
ようやくその仕事にもなれた頃、その社長さんが一本のカセットテープを出してきて
『近藤さん、これを聴いてみたら…?』
って差し出してくださいました。
そう…まだカセットテープがあった頃です(笑)
家に帰って、カセットテープを聴ける車の中で
なんだかわからないそのテープをかけてみました。
そう、もう…かれこれ12年ほど前のことになります。
そのテープからの第一声の声を聴いた途端に
なにか不思議な感情が湧いたのは覚えています。
自称『声フェチ』でございますので(笑)
勝手にそう感じただけなのかもしれませんが…。
世間も知らず、右を向いても左を向いても光は見えず
二進も三進もいかないその頃のわたしは
そのテープを聴き終わる頃には、大泣きしながらティシュで鼻をかんでいました。
そして、その夜わたしは一睡もできない一夜を過ごしたのです。
悔しくて悔しくて仕方なく…
わたしは、どれだけ甘えているのか…と、怒りさえ感じ
悔やんでも悔やみきれず、とにかく一晩中一睡もできずに泣き明かしたのです。
その声の主は『中村文昭さん』
なぜだか、そのテープを貸していただくことになる一年ほど前に
わたしは本屋さんに平積みしてある彼の本を買い
プロフィールを見て
この人に会いたい…と思った人だったのです。
そのテープからほどなく、三重県の名張市というところで
中村さんの講演会があるのを知り
高校生の長男を連れて、雪道を必死でその会場に向かった記憶があります。
その時は
講演会に行くお金を使うことへの大きな躊躇がなかったわけではありませんが
長男とこれを共有したいという思いの方が優ったのは間違いありません。
その講演会の後すぐに
今度は、地元四日市で中村さんの講演会があるとの情報が入りました。
平日の昼間だったこともあり
今度はわたし一人で出かけました。
そこで起こったのです!
結果的に大きな転機となる出来事が…。
講演会のあとには懇親会があるという案内をいただき
迷いに迷って懇親会にも参加することにしました。
会場がホテルだったこともあり
その頃のわたしには本当に痛い出費ではあったのですが
だからといって、そのまま帰る…という選択はできず
懇親会に残りました。
ところが、その場で誰かに積極的に話しかけることもできなければ
ご本人である中村さんに話しかけることすらできません。
時間ばかりが経ち
どうやらそろそろ懇親会もお開きの時間が近づいています。
いったいわたしはなんのためにここへ来たんだろう…と
やや落ち込み気味になったその時
中村さんが、ダンボールを抱えて目の前に現れました。
中には、物販で残ったらしい中村さんの本が入っています。
ざっと見た感じその数は、12、3冊に見えました。
わたしは思わず
『それ、どうなさるんですか?』
と、聞いていました。
『えっ? 持って帰りますよ、残ったんで…』
『えっ? マネージャーさんとかは?』
『いや、いませんよ…ぼくひとりで来てますから…』
『えっ、そうなんですか?
あの…
こんなにいいお話を聴かせていただいたのに
ご本人に本を持って帰っていただくなんてそんなことできません!
あの…その本、全部わたしが買います。
買わせてください!』
その瞬間は本当にただただ素直にそう思ったのです。
こんなにいいお話を聴かせていただいたのに
そのご本人に本を持って帰らせるなんて…そんな失礼なことできないわ…って。
そして
わたしは、財布の中に
いつもはまず入っていることのない一万円札が2枚
今日はなぜだか入っていることを知っていたのです。
その時の、中村さんの驚いた顔は今でも思い出せます(笑)
本当ですか?って何度も確認されました(笑)
でも、わたしの中は
一点の曇りもなく本当にそう思っているのですから
それ以上でもそれ以下でもありません。
そして
不思議なことですが…
そんな…本当に小さな出来事をきっかけに
ここから先、大きく大きく目の前の景色が変わり始めたのです。
ただ…思いがけない出費に
財布の中はいつもにも増して閑古鳥状態になり
やっちゃった感満載の日々を(笑)
家族の誰にも気づかれないように
しばらくの間、そーっとそーっと送るハメにはなりましたのでございます。

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