(5)桜の木の予言?

そんなこんなで…
一番変身してはいけない…
守ってあげなきゃ星人(笑)になってしまったのです!
20歳のますみは。
とはいうものの…瞬間的にそう思っただけで
日々の生活はなんら変わらず
悲劇のヒロイン病はそのまま続行。
なにをしても
面白さも感じない日々でした。
そんなある日…
そう、あの北陸自動車道をお尻フリフリ走った日から
半年以上が経った頃…
その彼がなんの前触れもなしに
ひょっこりとわたしの前に姿をあらわしました。
すっかり以前と変わらぬ元気な姿に戻って。
嫌いになって別れたわけじゃない人とこんな風に会うと
やっぱり情はわくものです。
結果的に
1回目のキャンセルした結婚式からほぼ一年後
同じ人ともう一度結婚式を挙げることになったわけです。
その結婚式の前日…
明日、待ちに待った花嫁姿になるわたしは
張り切り勇んでエステに行き
綺麗にしてもらってルンルンで家に帰るわけですが
そこで一つ目の事件は起こりました。
なんの障害物もない回りは田んぼか畑みたいな
直線道路をまっすぐに車を走らせていると
ナント!
どこから出てきたのかさっぱりわからない大きなワンボックスカーが
わたしの車に横から体当たりしてきたのです!
大きな衝撃になにが起こったのかさっぱりわかりませんでしたが
気がついたら、フロントガラスはバリバリに割れ
車はうんともすんとも動かない様子です!
どこか骨でも折れたか?というような衝撃でしたが
タイヤまで大破して車は見るも無残な様子でしたが
不思議なことにわたしの身体はかすり傷ひとつなく無傷です。
結婚式前日でもあり、明日という日を
待ち望んでいるわたしには
なんだか幸先の悪いイヤーな出来事ではありましたが
駆けつけてくれた保険屋さんと車屋さんにお任せし
家まで送ってもらいました。
足の骨一本でも折れていたら
またできなくなってしまう結婚式でしたが
無傷だったことで、ほどよく忘れ(笑)
明日の楽しみの方が大きくふくらみ
その日はワクワクで眠りにつきました。
ところが
メインイベントはその翌朝
まったく違うカタチでやってきました。
その頃(30年ほど前です)
花嫁姿を家で作り、家から花嫁姿で式場へ向かう…というのが普通で
特に東海地方では、当たり前のように
そうして花嫁さんが家を出る時
屋根の上からお餅やお菓子を撒くのです。
たくさんの方が花嫁姿を見にきてくださるというメインイベントなのです。
当日、早朝5時から美容師さんが家に来てくださり
花嫁さんを作ってくださいます。
ワクワクいっぱいで眠いのも忘れ
お化粧をしてもらって
文金高島田のカツラをつけようとした、その時
想像を絶する出来事が起こりました!
聞いたことのないような大きな地響きのような音と共に
わけのわからない振動が私たちを襲いました。
地震でもないのは明白でした。
何かが追突したか墜落したか???
家の中にいた全員が外へ出ました。
そして、声も出せず立ち尽くしました。
大人ふたりが手を広げてようやく囲むことができるか…
という、家の敷地の真ん中にあった桜の木が
バタンと根っこから倒れているではありませんか!
結婚式は5月。
その1ヶ月半前には、見事な花を咲かせていた
その桜の木が…です!
まったく理解不能!
立ち尽くした人々は、誰も言葉を発しませんでした。
おめでたい日の朝に
まさかのこんな出来事を目の当たりにして
なんと言えばいいのかわかりません。
そして、不吉な想像をしたからこそ
誰もそれを口に出すことをはばかったんだと思います。
だって…もうその時間には
福井から、我が家に養子に入ってくださるという彼と
その親戚御一行様が
なにも知らずに乾いた北陸自動車道を走っている頃なのですから…
でも、いま考えても良くできた話だなぁと思います。
家の敷地は、1500坪。
その真ん中に、悠然とそびえる自慢の桜の木だったのです。
その木が、なぜに…なのです。
家の方に倒れたら、屋根を破壊していたでしょう。
池の方に倒れたら、池の鯉たちの多くを傷つけていたでしょう。
そうです…一番被害の少ない方向に倒れていました。
すぐさま、会社の従業員の方に無理をお願いして
その木を運んでもらい
倒れた庭石を丁寧に戻してもらって
何事もなかったかのように
わたしは、白無垢姿になり
屋根からは、お越しくださった本当に多くの方達に向けて
お菓子やお餅がめいっぱい振舞われたのです。
でもね…
なんで今日なのーーーーーーーって思いましたよ!
それなら、もっと早くおしえてよ!って。
なにを言ってるんだ!
去年ちゃんとおしえただろう!
『わたしが…』…なんていうおまえのエゴが
それを聞かなかっただけだろう!
…なんて、誰かに言われたかと思うような(笑)
白無垢姿のうら若き花嫁は
それでも
晴れの日を喜ぶ気持ちもいっぱいで
式場へ向かうタクシーに
カツラをぶつけないように
そ〜〜っとそ〜〜っと乗り込んだのでした。

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